ANA国際線機内誌WINGSPAN7月号に、「Curvy Bamboo」(駿河竹細工)が掲載になりました。取材は、竹細工職人さんと通称「竹屋さん」と呼ばれる山から竹を切り出し細工用の竹に加工する職人さん双方が登場しております。
取材では、竹細工職人さんの素晴らしいお仕事にも驚きましたが、それと同じくらい驚いたのが「竹屋さん」と呼ばれる、山から竹を切り出し竹細工ができるように加工する職人さんでした。
作業は、まだ星が煌めく早朝から始まります。油抜きをするお風呂に薪や廃材をくべ沸騰するのを待ちます。6時になると一つ山向こうの寺の梵鐘が風に乗り響き渡ります。炎と星は、体内に眠る原始の感性を呼び起こし自然との一体感をもたらします。
撮影データ、12月6日5時56分、Nikon D5、VR 16~35mm f/4G 焦点距離16mm ISO 1600 8秒 ー f/6.3 色温度(3330K),0,0 クリエイティブライティングで外部ストロボを発光
約3m程に切られ1/2に割った竹は、湯が沸いたら苛性ソーダを入れ風呂に沈めます。
竹を苛性ソーダを入れた湯で煮ると表皮に油成分が出てくるので、湯からあげたら直ちに雑巾などで拭き取ります。湯から出した直後は、作業中の竹のようにくすんだ茶色の緑をしていますが、油成分が拭き取られ空気に触れると鮮やか緑色に変わります。(手前の2本)
油抜きの作業は、正確に素早く作業することが求められます。好天に恵まれた日は、大量の竹を加工するため、お手伝いの応援が必須となります。
これができたてホヤホヤの、油抜きされた竹です。美しいですね。
油抜きが終わった竹は、天日干されます。写真右奥は、まだ緑色が残る天日干し時間の短い竹。左側は天日干しの時間が長く乾燥も進むことで緑色が抜け茶褐色になった竹です。ブルーシートは、急な雨でも濡らさぬよう養生に使います。うっかり濡れると商品になりません。
こちらは20°近い急斜面にある孟宗竹の竹林です。切り出す目安は、節と節の間隔が20㎝以上に成長した真っ直ぐなものが選ばれます。切り出すときは竹の表面にキズが付かないよう細心の注意が払われます。この作業、かなり重労働です。
切り出し作業は二人で行います。他の竹と接触しないように竹林から搬出するには、切った竹にロープをかけ巧みに操りながら倒さないように竹林の中を移動させます。簡単そうにみえますが二人の息が合わないと、うまく竹を移動させることができません。
楽しいランチの時間です。お弁当は取材に応じていただいた梶山さんの奥様のお手製です。写真は左から、梶山さんの奥様、梶山さん、そしてカナダとバングラデシュから来日していたバックパッカーの青年です。お二人は取材当日、竹の切り出しから油抜きまでの一連の作業を、真剣に体験していました。
おっ!今や世界標準になった枝豆がみえますね。さらに日本の伝統的保存食「梅干し」も! これこそ日本人の脅威の持久力を支える食です。
今回取材に応じていただいた梶山さんは、大学卒業後、世界を旅し、その課程で人の生き方や表現を旅の先々の路上で学び、故郷藤枝に帰ったとき自分も路上で何かを表現してみようと思ったそうです。 そんな矢先、小さな川の土手に炎が見え、そこで作業するおじいさんに声をかけ話しをするうちに「オレは引退する、明日からおまえがやれ」と言われ独学で「竹屋さん」になった経歴を持ち主です。インタビューでは「や〜ほんとに何も教えてもらえなくて参りました」と照れながらお話されていましたが、その苦労は並大抵のものではなかったはずです。 若い時に世界に触れ自分自身を知れば労働の意味も変わります。いきいきと働く姿は、世界の路上で得た輝く力そのもののように思えました。必ずや静岡を、そして藤枝を魅力ある地域に変貌させてくれることでしょう。 さて現在梶山さんは、この「竹屋さん」の他にAirbnbで一棟貸しの民泊事業もはじめられ藤枝をはじめ静岡の魅力を世界の人々に伝える仕事もしています。宿には、お茶の儀式や竹製品の製作など様々な日本を体験するツアーが用意され、外国の方々に人気となっています。 URLはこちらになります。www.yuivalley.com