写真展「十勝晴れ」
 

抜けるような「十勝晴れ」。川には、ごく普通に流木があり時の流れに身を任せている。あの世に旅立つ時、この光景が瞼に映るように思えてならない。

新雪は、川から連なる丘を見事なディティールで描き出し、その浸食の歴史を露わにさせる。また丘の陰影は、雪原の反射を受け静な主張をする。

海岸に突き出た地層から染み出す地下水は、主に夜間につららになり、日中の気温がマイナス5度くらいになると落下をしはじめる。

高さ数十メートの断崖。もろい部分から浸食され染み出す地下水は、落下する間もなく凍結し巨大なつららとなる。画面右角がそれ。

ホロカヤントウの砂州が決壊すると、土砂は海に流れ出し海底を浅くする。浅くなった場所に来る波は一気に巨大化。そこに強い北風が波頭をめくる。

2016年、北海道に上陸・接近をした計4個の台風は、歴舟川の河口にも膨大な土砂を堆積させた。これは、その後の浸食でできた中州。2020年1月に消滅。

日高山脈を遠に望む歴舟川河口。川を覆っていた氷が海に流れ、それが浜辺に打ち上がる。85㎜アオリレンズを用いパンフォーカスにしている。

高さ10m以上にもなる壮大な「けあらし」。この霧のような水蒸気は、凍らない川の温度と大気の温度差からくるもの。撮影当日の気温はマイナス26度。

冷たく重い「けあらし」は川から流れ出し十勝平野を覆う。それは平地に現れる雲海と言っていいだろう。朝日に漂う光景は神秘的だ。

水位が下がる厳冬期、中州は大きく露出する。ここに降る雪の多くは強風で吹き飛ばされるが残った雪は風紋として残る。川面には「けあらし」が発生。

十勝川を覆っていた分厚い氷が、気温や潮位の変化など様々な要因で海に流れ、波により浜に打ち上がる。氷の厚さは30〜40㎝。

マイナス28度、風速3m。打ち寄せる波は、流木を巨大なオブジェに変容させる。気温の低さは海上で発生している「けあらし」が、その証。

河口付近の積雪は、潮風により硬く固まるが、そこに強風が吹き付け波打ち際まで独特の風紋を描き出す。

砂浜に打ち寄せられた流木は、比重により階層化した砂が凍ることで固定される。強風は脆い部分から砂を吹き飛ばし、独特の等高線を描く。

冬、河川の水位が下がるにつれ結氷した川の氷は、溶けないまま川岸に置き去りになる。その氷はどこか大陸移動説をおもわせる。

凍結した川は、絶好の風の通り道。雪原に比べ風の様相がみえやすい。幼少期、このような川でスケートをしたことを思い出す。

太平洋に流れ落ちる滝の上から海原を望む。小さな滝の表面は全て凍りつき、水は、氷に閉ざされた地面を流れる。

長さ10mはあろうかと思われる流木。大波が石浜の奥まで運び、しばらく同じ位置に鎮座する。遙か遠方に見えるは雪を頂いた日高山脈。

太陽が南中にさしかかる頃、川を覆う氷が膨張し、流木の近くなど氷の硬さが弱い所から歪みが生じ亀裂が走る。

十勝川の河口付近には、大小様々な沼が存在する。天気がよく上昇気流が程よく発生すると、鳶やオジロワシなど猛禽類が大空に舞い上がる。

十勝川を覆っていた氷は、潮位や風、気温など様々な条件が重なることで流れ出し、浜に打ち上がる。黒く見えるのは、一緒に上がった岸辺の凍土。

砂州により海と隔てられた沼。2019年1月。中旬を過ぎても積雪が無く全面凍結となった。巨大なスケートリンクに思えてしまうのは、十勝っ子の嵯峨か。

「十勝晴れ」空を一頭の羊が駆け足で通り過ぎる。画面下部はハマナス、その奥は、私の大好きなエゾニュウの立ち枯れが並ぶ。

厚さ10㎝ほどの透明度の高い氷に亀裂が入る。なぜ、一番上の層に透明度の高い氷ができるのか、その生成過程に興味がわく。

画面左下から中央にかけて水の流れが逆流している。これは河口に打ち寄せた大波が海水を川に押し戻しているからだ。時々溢れるが、即、凍結し層を成す。

鹿が凍結した川を歩くと穴が空く。そこに新たな氷が張り不思議な痕跡が残ることになる。凍結した川を彩る楽しいリズム。

1月中旬。川は、水量が豊富だった頃に成長した川面の氷をそのまま残し、水位を下げる。流れの速い瀬は、凍結せず顔を出す。

海浜の丘は風雨や雪で浸食が進む。そこに現れたのが奇妙でユーモアたっぷり砂岩。十勝晴れの日は、一層微笑ましい。

寒さが一層厳しくなる1月末。川は地表に面した大部分が凍りつく。しかし、水は暖かい地中を流れ凍りにくい浜辺付近で突然顔を出す。

凍結した川に空いた穴。この場所は、大量の水蒸気が下を流れる川から補給されるため、雪の結晶に似たフラクタル構造を形成する。

川の流れが速い部分は凍結しにくい。鋭く伸びるサメの歯の様な部分は、川がもたらす水蒸気で成長するが、乾いた寒風で気化し縮む。

川は川岸から凍結する。南中のころ太陽光で暖められた石が岸辺の氷を解かし離岸する。まさに一瞬の出来事。風景写真は本当に気が抜けない。

浜辺の雪。これは浜辺に降った雪に風で飛ばされた砂が乗り、それが太陽光で暖められ、大きな粒に集約しつつ風の力も加わり部分的な融解が進む。

太平洋に流れる自然のままの河口。川原に積もった新雪は、その下の微妙な地表の形状を優しく覆い、静かに眠る動植物に一時の思索の時間をもたらす。

十勝川に接する凍結した沼は、川の水位や海の潮位、さらに気温の変化で膨張と収縮を繰り返す。これは膨張時に氷が盛り上がり、そこに空気が入った様子。

ヨシ原。12月そして1月と沼の水位が下がるにつれ、最初に凍結した水位の氷が取り残され階層化していく。ここでは大きく3層が見てとれる。

砂州により太平洋と隔たった沼、オイカマナイトー。砂州を越えた大波が氷結した湖面を砕く。春になると、この場所から決壊することも。

ヨシ原に木立が点在する典型的な湿原の風景。昨今、このような沼に硝酸態窒素やアルミニウムが流れ込み動植物に影響をあたえている。

歴舟川の河岸段丘。川岸の木立が、凍結した川に降り積もった新雪に物語を作り出す。木立を通して見えるのは、日高山脈。

十勝の海岸は、襟裳岬から弧を描くように東に至る。この地形を東から西南にカメラを向けると巨大な湾に感じる。日高山脈を背景に輝く海は冬の風物詩。

谷地坊主が群生する湿地。このような風景は、その昔珍しいものではなかった。2020現在、多くの湿原は失われ谷地坊主も探さないと見ることができない。

谷地坊主。寒冷地の湿地でスゲ属植物が枯れ腐らずに積み重なり、ドーム状に年月をかけ成長する。十勝でも天然記念物に指定して観光資源にすべきた。

写真のカラ松は、風雪にさらされ折れ曲がりながら新芽を出し、光の差す天に向かい枝を広げる。自然、それはクリエーション。

十勝を代表する樹木「槲(かしわ)」、高さは十数メートルにもなる。落葉した枝ぶりは独特の様相を呈し脳血管のようだ。高く昇らない極寒の陽に映える。

スーパームーン。月の出と日の入りが接近する。この場所でこの写真を撮るために何年待ったことか。満月の下、槲が真冬日の残照に最後の輝きを放つ。

マイナス25度。荒涼とした大地に朝日に映える日高山脈をみる。この場所、春ともなれば見渡す限り畑になる。

眼下に広がる原生林は、十勝と上川を分ける三国峠からの眺め。強風は木々に降り積もった雪を舞い上がらせ雪煙を上げる。午後2時、すでに斜光。

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